20代前半のころ。僕はまだサラ金会社の新人で
延滞のお客さんの電話対応や、訪問対応が多かった。
その日も、毎月のように支払いも連絡も無視してくる60代のお客さんAさんの家へ向かった。
Aさんの家は僕の会社から車で約2時間半。
田舎町という感じの場所だ。
小さな平屋。
チャイムを押すと、珍しくすぐに出てきた。

と聞くと、開口一番こう言われた。

ごめんねぇ…お金がないのよ。
仕事もしてないし、どうしたらいいだろ?


収入は全く無いんですか?

まったくなくて生活も困ってるんだよね。
もう『2号さん』になるしかないわね…


(……2号さん?)
当時20代前半の僕は、その意味がわからなかった。

2号さんってなんですか?

Aさんは妙に艶っぽい視線を向けてきた。

男の人の2番目になって、お金の面で助けてもらうの。
わかるでしょ?

え、そういうこと!?
なんとなく『大人の関係』という事なのかな?とは思った。
Aさんは60代とはいえ女性。きっとそういう関係の男の人がいるんだなと勝手に思い込んでしまった。

それじゃ、支払いなんとかなりそうですね。
じゃあ何時頃きたらいいですか?

10分待って

(10分!?送っていってほしいって事かな?)

10分って……僕が送っていくってことですか?
すると、堂々とした表情でひと言。

はい、そうです。
車に乗った瞬間、「この道をまっすぐ」「左」「右」と、
完全にナビを始めるAさん。
そして、たどり着いた先は―― ホテル街。


(ん?もう相手の男性に連絡したのかな?)
(ホテルに入ってから男性があとから来るのかな?)

どこまで行けばいいですか?
と聞くと Aさん

あそこのホテルに入ってください


え?! 一緒に入ったら勘違いされますよ?

じゃ、別々に入りますか?

え?? …あとで連絡くれたら迎えにきますよ?

じゃあ、私の準備ができたら連絡するので部屋に来て下さい。


…???
なにか違和感を覚えたので覚悟を決めて、正面から聞くしかなかった。

Aさん…2号さんってどういう意味ですか?
これから「2号さん」の人に合うんですよね?
ゆっくり、はっきり返ってきた言葉。

あなたの2号さんになってあげるから、払ったことにしてほしいのよ。
……完全に意味が分からなかった。
僕の頭の中はひとことで言うと “え?…なんで?” だけ。
20代新人の僕は、そもそも「2号さん」という言葉に馴染みがない。

えっと……それは……どういう……?

だから!私があなたの2号さんになるの。
そしたらお金払ったことにしてくれるでしょ?

私じゃダメだった?
いや、絶対にダメです。
まさか母親より年上の方に、そんな提案をされるなんて想像もしていなかったし、僕をそういう対象として見られていることが衝撃でした。
… ホテルの前で、僕は静かに言った。

いやいや絶対にダメです。 怒られちゃいます!


お気持ちはありがたいですが……会社に帰ります。
その日わかったこと
お金に困ると、「いやいや、そんなドラマあるかよ」
みたいなことが本当に起きる。
2号さんの提案も、ホテル街ナビも、全部リアルだ。
Aさんがその後どうなったかは書けないけれど、
あの状況を振り返ると、もっと早い段階で動ける選択肢があったはずだと今でも思う。
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今月も支払い滞ってますよ